漢字の入力方法
ここ数日、「漢字道楽」阿辻哲次著を読んでいた。阿辻さんは以前にこのブログでも紹介した「漢字の字源」の著者でもある。漢字の大家の白川静さんの漢字本も興味深いが、自分にはすこし難しい。なかなか一冊読みきれない。それに比べ阿辻さんの本は、電子メールや文字コード、世の中一般のことにも触れているので読みやすい。
| 漢字道楽 著者:阿辻 哲次 |
さて、今回読んだ「漢字道楽」であるが、著者の阿辻さんが印刷屋の息子に生まれ、それが因果で京都大学で漢字を研究するようになった話など、なかなか面白い話が紹介されている。印刷をするための活字を活字屋さんに買いに行かされるなど手伝わされていた経験から、様々な漢字がどの部首に属しているか知るようになり、当時漢文を教えてくれた高校の先生に認められたことから、漢字の道を選ぶようになったという。
私は、仕事がら文字の入力方法に関して興味がある。この本では、部首から漢字を引く方法など、漢字を調べる方法に関して記述も多く、興味深かった。
知らない漢字に出くわしたときどうやってその漢字の意味や読みを調べるであろうか。漢字を調べる方法は入力方法とにているので、あわせて考えてみる。
1)音読み訓読みから漢字を調べる。
もし、漢字が日本の漢字でありその読みが分かれば、漢和辞典の音訓索引から調べたい漢字の意味や熟語など調べることが出来る。PCの仮名漢字変換もこの方法の一種だ。
しかし、読みが分からない場合はこの方法がとれない。まして、簡体字や繁体字など外国で用いられている漢字の場合、その読みをピンインや注音記号で正しく理解しているのはなかなか難しいので、未知の漢字には弱い。
2)総画索引で調べる。
ならば、漢字の総画数で調べる方法がある。その漢字が何画か紙や中空に文字を書いてめぼしをつけて漢和辞典を引くと思う。ただし、この方法では角の曲げ方、曲線の数え方など、その部分が1画か2画か微妙な場合もあるので、例えば15画の文字でも、14画、15画、16画と探しまくり見つけなくてはならない場合もあるので、場合によって長い時間漢和辞典と格闘することになる。
3)部首索引から調べる。
いわゆる、草かんむりとか手へんとか部首の名前から引く方法である。PCの場合、MSIMEでも例えば「くさかんむり」という文字を入力エリアに入力して確定する前にファンクションキーのF5を押すと、草かんむりの漢字の一覧が出るのでそこから探せばよいので便利である。
ただ、部首の呼び名はなかなかバリエーションが多く、「つくり皮」「なめし皮」「ひよみのとり」「おおがい」など、該当する漢字はよく使うのに、専門的な名称が付いているので、探すのが大変なときもある。
この方法は漢字を、その構成部分から探すので読みが分からなくて、画数が良く分からなくても引けるので便利である。ただし、漢字はかならずしもシンプルな部首で構成されているわけではないので、探そうとする漢字が部首索引のどこに属するか分からないものも多い。「漢字道楽」でもその例がいくつも示されている。
4)字書では使えないが、手書き認識を使って調べる方法
以前に北海道日本ロシア協会にお手伝いにいったときに、ロシア人のスタイル抜群の美女オーリャが使っていた方法だ。OSにこんな機能が標準であるとは思わなかった。マウスで、手書き漢字をささっと書き、手書き文字認識をさせることで漢字を入力していた。
われわれ日本人は「さんずい」とか「こざとへん」とか部首の名称は小さいときから知っていても、外国人にはその部首の読み方自体が難しい場合がある。そんな場合、目の前にある漢字を筆順はどうあれ、それらしい形を書けば候補となる漢字が表示され、該当する漢字を見つけられるのは便利であろう。
他にもあるかもしれないが、以上の4種類が漢字の調べ方、入力方法として考えられる。
自分は、簡体字、繁体字、日本の漢字、これらを楽に入力できたり、その読みを簡単に探せるような仕組みを作りたいと考えている。このソフトウエアを使えば、日本の漢字が繁体字、簡体字でどうなるか。どんな発音されるのか。どんな発音表記されるのか、など有機的に調べられ、役に立つものを作りたいと思っている。
例えば台湾の繁体字、一般的に注音符号をキーボードで入力し、その読みから漢字の候補を出して、該当する漢字を入力するのが一般的である。しかし、発音が同じものが多い漢字では、候補表示される中から選ぶのでは高速入力は困難である。そこで、倉頡(そうけつ)輸入法という入力がある。この方法は、漢字をその見た目の構成要素に分解し、その構成要素から漢字を入力する方法である。1分間に2百文字以上入力できるそうで、キーボードも注音輸入法より使うキーが少なく済むそうである。ハングルも特殊なキーボードを使うのであるが初声、中声、終声の3フェースを打つほうが1分間に300から400文字も入力できるというから、熟練した場合、構成要素から文字を入力するほうが早く入力できるのかも知れない。
ともあれ、日本人が繁体字、簡体字を日本の漢字の知識を利用して楽に入力できるようになることは、今後10年20年必要なことと思う。
「漢字道楽」には、台湾で用いられている倉頡(そうけつ)輸入法の名前の由来となった蒼頡の話が載っている。昔、黄帝の部下に蒼頡という人がいた。彼は鳥や獣の足跡を見ただけで、その足跡がどんな鳥獣かわかったという。それほど、特徴抽出力が高かったそうだ。黄帝は、彼に漢字作りを命じた。そうして、彼は事物の特徴を的確にとらえ、象形をベースとする漢字ができた。こういった蒼頡造字伝説が昔からあるそうだ。彼は絵に描かれるとき四つ目として描かれている。それだけ眼力があったということだろう。
実際は、長い時間をかけ、文字が作られたといわれているが、秦の始皇帝のときに漢字が標準化されたように、ひょっとしてそれ以前に漢字の標準化を行った人がいたかもしれない。台湾の倉頡輸入法は、この蒼頡から名前をとったらしい。
台湾の倉頡輸入法は、確かに革新的だ。ソフトウエアでこれを実現した人はさすがだと思う。われわれの漢字も、その部首に関してはいろいろな呼び名を付けられている。これらをうまく利用して何かいい入力方法がつくれないか。これも一つ面白い課題だと思う。


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