風林火山
この1月よりスタートしたNHKの大河ドラマ「風林火山」は、なかなか面白そうでこれからも見ようと思っている。
自分は、もともと戦国時代は戦いや駆け引きが中心なので、あまり現実世界に生かす材料が乏しい感じがして、歴史ものでいえば幕末のほうが圧倒的に好きだった。ただ、今回は主役の山本勘助演じる内野聖陽がなかなか格好いいのと、ドラマを歴史のヒーロー物語として描くのではなく、普通の人間が次第に成長していくヒューマンドラマとして描いている点に共感を持ったので見る気が起きた。
今日、図書館に借りている本の返却に行ったときに、原作の井上靖の「風林火山」を探したが、さすがに借りられていてなかった。少々残念で、ならば漢字関係の本を借りようと漢文コーナーに行った。するとそこに、「漢文名作選 第2集 1古代の思想」大修館書店という本があった。
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漢文名作選〈第2集 1〉古代の思想 著者:鎌田 正,江連 隆,塚田 勝郎 |
ぺらぺらと中をめくってゆくとその中に「風林火山」という文字を発見した。自分は「風林火山」とは武田信玄が戦のときに旗を作り、それをいつも陣中に立てていたとのことで、武田信玄の言葉だと思っていた。ところが、これは中国の兵家、皆が知っている「孫子」の言葉なのだ。
ちょっと長いけど漢文を掲載しますと
「風林火山」
兵は、詐(さ)を以って立ち、利を以って動き、分合を以って変を為す者なり。
(戦争は敵をあざむくことを根本とし、利に従って行動し、部隊の分散や集合によって変化をとげるものである。)
故に、其の疾き(はやき)こと風のごとく、其の徐やか(ゆるやか)なること林のごとく、侵掠すること火のごとく、動かざること山のごとく、知り難きこと陰(いん)のごとく、動くこと雷震(らいしん)のごとく、郷(きょう)に掠めて(かすめて)衆に分かち、地を廓めて(ひろめて)、利を分かち、権を懸けて動く。
(こういうわけで、軍の進退は風のように速く、待機する時は林のように静まりかえり、敵地に侵攻し物資をかすめ取ることは火のようにはげしく、陣地を構えて敵軍を防ぎ守るには山のように泰然として動かず、行動は闇のように敵に知られず、動けば雷鳴のようにとどろきわたり、敵国の村里から物資を奪い取っては兵に分け与え、敵地を占領してはその収益を兵に分配し、万事についてよく利害をはかり考えて行動する。)
先ず、迂直(うちょく)の計(けい)を知る者は勝つ。此れ軍争の法なり。
(何よりもまず、まわり道を近道にするはかりごとを知っている者が勝つ。これが機先を制するための法である。)
村から物資を奪ったり、敵地に攻め入ったら火のように強奪してさっと引き上げるだの、現代に照らせば、生臭すぎる教訓である気がする。武田信玄や山本勘助の生きていた戦国時代ならどれもぴったりする教えだったかもしれない。
そんな孫子の兵法であるが良いことも書かれている。「百戦百勝は善の善なるものに非ず」という文だ。百回戦って百回勝つのがなぜ、最高の善ではないのか。孫子は、戦わずして敵兵を屈服させることこそ最上の方法だ、と述べる。戦えば必ず味方にも傷を負い、死者を出し、物も破壊される。百回戦って百回勝ったとしても、見方の損傷もかなりなものになるだろう。では、どうすれば戦わずして勝てるか。
1.敵の計略を見抜き、封ずることである。
2.敵の同盟関係を断ち切り、孤立させることである。
それでもだめな場合、
3.兵刃を交え、敵兵を討伐することである。
4.最もまずいのは敵の城を攻めることである。
ということである。
現実的に戦わないのが一番良い。そのために外交手段や情報活動でなんとか解決する手立てを打つ。しかし、どうしても戦わなければならぬときもある。そんなときには、勝つためのノウハウが要る。それがこの孫子の兵法には漢文で記載されている。
そう考えると、いま難しい状況にある北朝鮮やイラク、中東問題なども、孫子の兵法の記載されている一文一文が参考になるように思えてくるので面白い。
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